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大阪地方裁判所 平成3年(わ)2376号 判決 1991年12月18日

本店所在地

大阪市西成区花園北二丁目一二番三一号

有限会社

光本商事

(代表者代表取締役廣瀬良夫こと崔錫権)

国籍

韓国(慶尚南道山清郡今西面坪村里四八五)

住居

神戸市灘区篠原北町三丁目一二番二二号

会社役員

光本徹こと呉基福

一九三二年四月一五日生

主文

被告人有限会社光本商事を罰金三〇〇〇万円に、被告人呉基福を懲役一年六か月に処する。

被告人呉基福に対し、この裁判確定の日から三年間刑の執行を猶予する。

理由

(犯罪事実)

被告人有限会社光本商事(以下、「被告会社」という。)は、大阪市西成区花園北二丁目一二番三一号に本店を置き、パチンコ店等の経営を目的とする資本金九〇〇万円の有限会社であり、被告人呉基福(以下「被告人」という。)は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括していた。被告人は、被告会社の業務に関し、その法人税を免れようと企て、

第一  売上げの一部を除外するなどの方法により所得の一部を秘匿して、被告会社の昭和六三年四月一日から、平成元年三月三一日までの事業年度における実際の所得金額が一億二六五一万二九三七円あった(別紙修正損益計算書(一)参照)のに、同年五月二九日、大阪市西成区千本中一丁目三番四号の所轄西成税務署において、税務署長に対し、その所得金額が一四一五万三五七〇円で、これに対する法人税額が三八七万四〇〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出した。そして、そのまま法定の納期限を経過させた結果、この事業年度における正規の法人税額五一〇六万四八〇〇円と申告税額との差額四七一九万八〇〇円(別紙税額計算書参照)を免れた。

第二  第一と同様の方法により所得の一部を秘匿して、被告会社の平成元年四月一日から、平成二年三月三一日までの事業年度における実際の所得金額が一億八五一八万六一八円であった(別紙修正損益計算書(二)参照)のに、同年五月三〇日、前記西成税務署において、税務署長に対し、その欠損金額が三五二万七三四三円で、これに対する法人税額がない旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出した。そして、そのまま法定の納期限を徒過させた結果、この事業年度における正規の法人税額の金額七二五八万二五〇〇円(別紙税額計算書参照)を免れた。

(証拠)

(注)括弧内の算用数字は証拠等関係カード検察官請求分の請求番号を示す。

全部の事実について

1  被告人の

(1)  公判供述

(2)  検察官調書

(3)  質問てん末書一〇通

2  光本正明こと呉正明、光本敏雄こと呉龍福の検察官調書

3  光本正明こと呉正明(四通)、光本敏雄こと呉龍福(一一通)、三島芳文の質問てん末書

4  査察官調査書(7、8、10から12、14)

5  証明書(5)

6  商業登記簿謄本

第一の事実について

7  査察官調査書(15)

8  証明書(3)

第二の事実について

9  査察官調査書(9、13、16)

10  証明書(4)

(法令の適用)

一  罰条

(一)  被告会社 いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項

(二)  被告人 いずれも法人税法一五九条一項

二  刑種の選択 懲役刑(被告人)

三  併合罪

(一)  被告会社 刑法四五条前段、四八条二項

(二)  被告人 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い第二の罪の刑に加重)

四  刑の執行猶予 刑法二五条一項(被告人)

(量刑の事情)

一  本件は、「萩之茶屋会館」(大阪市西成区内)、「ビクター会館」(兵庫県西宮市内)等の店名でパチンコ店を営む被告会社において、業務全般を統括していた被告人が、昭和六三年四月からの二事業年度に合計三億一〇〇〇万円余りの所得をあげながら、売上げの一部を除外するなどの方法により所得の一部を隠して申告し、二年分合計一億一九〇〇万円余りの法人税を脱税した事案である。脱税額は多額であり、ほ脱率も、昭和六三年が約九二パーセント、平成元年分に至っては一〇〇パーセントであって、二年分の所得のほとんどすべてを秘匿したというべき事案である。

二  その犯行の態様は、二つの店舗において、店長らが毎日の売上げの一部を除外し、被告人がこれにより得た資金を仮名の定期預金等として留保していたものであって、その手口は巧妙ではないとしても、相当大胆かつ常習的である。犯行の動機は、被告人が在日韓国人であるため、不況の際には金融機関から真先に融資を打ち切られるので、そのような場合に備えて、多額の裏金を常に蓄積しておく必要があるというものであるが、このような事情は、在日韓国人に限らず、零細な事業者のいずれもが共通に抱える悩みであり、納税を前提とした上で、合法的な経営努力により解決されなければならないことであるから、動機として酌むべきものとはいえない。そうすると、被告人と被告会社の刑事責任は軽視することができない。

三  しかし、他方、被告人は、査察段階から事実関係を素直に認めて反省の態度を示していること、事件発覚後は、新たに顧問税理士を迎えて経理部門を一新するなどの納税義務に違反しないための体制を整え、その後被告会社の役員を辞任したこと、被告会社においては、本件ほ脱額に関し、本税、附帯税合計一億七九〇〇万円余り、地方税合計八〇〇〇万円余りをすべて早期に納付済であること、被告人には、前科前歴がなく、競争の激烈な業界で事業の発展に懸命に取り組んできたことなど被告人らのために酌むべき事情も多く認められる。

四  そこで、これらの事情を総合考慮して、被告人と被告会社をそれぞれ主文の刑に処し、被告人に対しては、その刑の執行を猶予するのが相当と判断する。

(出席した検察官福垣内進、弁護人滝口克忠ほか二名)

(裁判官 三好幹夫)

別紙 修正損益計算書(一)

<省略>

別紙 修正損益計算書(二)

<省略>

別紙

税額計算書

<省略>

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